その名は、一瞬よぎっただけにも関わらず、友典の思考を一気に攫った。
「…鷹野、息吹……」
なにか、危険な匂いがするが、同時に、とてつもなく甘美な気すらする。
鷹野一樹の職場を知り得て、尚且つ、当人の所在もはっきりしている。
半ば監禁されているかのような状態だが、あの場所は、今から行ってもさほどの遠さではない。
あの場所を片付ける際には一緒にやったし、本人の顔も、知っている。
「……いや…」
だけど。
鷹野息吹は、何をしてああなっていたっけ?
どうして、凱司自らが手をかけて軟禁されている?
知らない。
知らされてはいない。
ただ、鷹野一樹の兄だ、と。
ドラッグのせいで、思慮の欠けてしまった男だ、と。
それしか、教えられていない。
大事なことは何も。
いつも。
知らされはしない。

