いいですね、そこを動かずにいなさい。
と、念を押した声も、ふと友典の中に芽生えた感情に、押し退けられたような感覚を覚えた。
「…鷹野一樹の、勤め先を…教えてください」
彼女のいるカフェは、どこですか。
「俺が、迎えに行きます」
苛々と。
鬱屈と。
何をやっても、何を言っても、上手く行かない。
笑顔ひとつ、作れない。
泣きながら歩いていた?
泣かせたのは、自分だ。
おこがましくも、凱司さんの大事にしている人を、泣かせたのは、自分なのだ。
「…立場を…忘れました」
小さな存在感しか持ち合わせないような雅を、ただの下級生だとでも、錯覚したのかもしれない。
大きな存在の凱司に憧れるあまり、仕えると決めた小さな存在を、自分の理想に嵌め込もうとした。
してはいけない。
してはいけない、事なのに。

