『友典』
電話の向こうに、凱司はいるのだろうか。
気配は、あるような気がする。
『私は、友典を雅さんに付けたことを後悔しています』
同じ学校であったというだけのことで、安易に認めてしまった。
「…今、彼女はどこに?」
はっきりと父親から失望の声を聞くと、凱司に責められているような気がして、友典は焦った。
確かに責められ、叱られるほどの事になっている自覚はある。
あるが、凱司とも彼女とも話す機会すら与えて貰えずに、彼女から外されそうな予感に、今度ははっきりと、怖くなった。
『一樹さんの勤め先の傍にあるカフェで、泣きながら歩いていた雅さんを保護してくださったそうですよ』
一樹さんが連れて帰るまで、そこを動かずにいなさい。
鍵を、確実に手渡しなさい。
淡々と話す父親の声は、どこかずいぶん遠くの方から、聞こえた気が、した。

