友典は。
雅のバッグを肩に下げたまま、彼女の住まう家の前に、立ち尽くしていた。
鍵は、ある。
背後に閉まる、強化ガラスのドアの鍵も、その奥の階段の先にある玄関の鍵も。
使うことは、できない。
ひたすらに、ただ立って、彼女の帰りを待つ。
捜すことは、許されなかった。
鷹野一樹の所在も、教えては貰えなかった。
多分、彼女はそこへ行ったのに。
『自分が何を口に出して言ったのか』
血を吐くほどに考えろ、と。
「何が…違ったんだ…」
考えても、考えても。
自分の言ったことに間違いがあったとは、思えなかった。
彼女は凱司に、恩があるはずだ。
鷹野一樹にではなく、凱司に。

