『このまま、お預かりしておきますよ。お勤めが終わったら、改めてお迎えにいらしてください』
にこやかに笑むマスターが、雅を手招いた。
思い出したように時計を見、ああ面倒くさい、と呟いた鷹野は、それでもマスターの好意に甘えた。
まるで自分の幼子を、初めて保育園に預ける母親のような、そんな鷹野の面持ちに吹き出すのをこらえ、マスターは、大丈夫ですよ、と微笑んだ。
渋々、と言った感じで職場に戻る鷹野をそれとなく見送り、マスターは雅を店の奥へといざなった。
「退屈でしょう。ちょうどマカロンが冷めましたから、これをこう……挟んでいっていただけますか?」
柔らかいヌガーのような、ナッツクリーム。
湯気の上がる琥珀色に、薄くスライスされた木の実がたくさん混ぜ込まれ、よく練り上がった透明な艶が、綺麗だった。
「熱い上に、飴になってますから、火傷に気をつけてくださいね」
そっと後ろから、雅の髪を包み込むようにレースを掛け、うなじで小さく結んでやりながら。
雅の、やっていいんですか!?と現金にも無邪気にきらめいた目に、堪えきれずに、吹き出した。

