天気予報は、台風到来を告げていたんだ。
真っ暗で、妙に静かな日。
行かないと決めた、あの日。
鷹野には、何も言ってはいなかった。
仕事を持つあいつは、どれだけ不自然に、自分が出掛けていたのか、知らないはずだ。
ポツポツと降りだした雨が、激しさを増した頃には。
いつもの時間は、過ぎていた。
さすがに、台風が来ているような天気の中、居ないと分かればさっさと帰るだろう。
と。
そう思った。
そう、思ったのに。
興味を持ったのは、俺だったんだ。
いつまでも黙っているあのガキが、今もいつもの場所に居るんじゃないかと、気が気じゃない。
むしろ居るだろうとすら。
思った。
ひどく、苛ついて。
折悪しく休暇日の鷹野に黙ったまま。
苛つきの原因を取り除こうと、車を走らせた。
突風が吹き、雨脚が強い。
こんな中に、居るわけない。
居るわけない。
あんなガキが、居る訳ないじゃないか。
角を曲がって、水飛沫の中に踞る、捨て猫さながらのあいつの姿を見るまでは、それでも拾う気はなかったのだ。
もう来るな、と。
そう言うつもりだった。
不安に押し潰されそうな、その目を、見るまでは。

