最初は、変な女だと思った。
やたら近くに座り込んで、明らかにこちらを見ているのに、話し掛けて来ない。
気持ち悪い。
そう思った。
だけど、立ち去る素振りもなかったから。
仕方なく、先に立った。
ずいぶん遠退いてから振り向けば、すでに居らず、何か意味があったのかすら、解らなくて。
翌日も翌々日も、同じ時間に行かなければならなかった。
ふらりと現れるあのガキは。
前日と同じように、楽しげな目をして見ている、だけだった。
何を見ているのかは解らないけれど。
俺に惚れているならば何かアクションがあってもよさそうなのに、全くそんな素振りもない。
見たことも、ない女。
見えない壁の向こうにいるような、不可思議な奴。
不意に、心配になった。
暗くなる前に、帰れ、と思った。
なにが良くて、俺を見に来る?
見てるだけか?

