たぶん恋、きっと愛



その木の根元は、マンションの敷地内だった。


雅は、何故か昌也に連れられ、首を傾げていた。

手こそ引かれないが、鷹野が、佑二が、何か雅に話しかけ、それに返事をする前に体の向きを変えられる。


その剣幕は凄まじく、雅はオロオロと昌也を見上げ、その服をつまんだ。



「あ、の…喋ったら、駄目ですか?」

「……凱司さんが居ない間に、おかしなことになったら…きっと荒れる。そしたら手ぇつけらんない」



顔色すら無くしていそうな昌也に、雅は眉を下げる。



「でも…」


髪のうねりは、直したつもりなのだろう。

中途半端に濡れ、櫛の跡が見えた。



はらはらと。
ピンク色の花が落ちてくる。

特に強い風などが吹いたわけでもないのに、いくつも落ちてくる様は、街灯の仄暗い光の中でも充分に綺麗で。

雅はそばにいるのが誰であるのかも忘れたように、昌也の服の端を掴んだまま、ふと嬉しそうに上を振り仰いだ。



「綺麗」


桜よりは遥かに重たそうに舞うその花は、花びらではなく、花ごと落ちる。

枯れた様子もないのに、房からぷつりと離れて落ちるピンク色が、雅のまとまりきらない髪に引っかかった。




「あたし、流されてますか?」

「…え?」


上を見上げたまま、ふいに昌也に視線を移した雅は、つまんだ服の端もそのままに、昌也の赤い髪にも降り落ちたピンク色に指を伸ばした。


何気なくされたその動きに、昌也の動きは止まり、見ていた佑二も呆れたように、ため息をついた。