「で、もね…あたし…!」
先輩に…あの……されたから、駄目だと…
「…嫌なら…しない、って言いたいとこなんだけど」
よく考えたら、腹立って腹立って。
眉間にしわの寄る鷹野など珍しい気がして、雅は呑まれたように固まった。
くすくすと笑う鷹野の髪が頬に触れてようやく。
雅は背を押さえる腕と、笑ってはいないように見える目とに、僅かに怯えたように、見えた。
押し戻そうとした雅の手を掴み、半ば強引に。
唇を、重ねる。
せっかく大事にしてきたのに。
少しは前を向いていたのに。
あっさり諦めるなんて。
俺や凱司を、諦めるなんて。
諦めた振りを、するなんて。
「……ちゃんと、戻って来なきゃ駄目だろ…?」
何があっても、どんな状態でも、戻れる場所を作ったんだから。
怖かったと。
嫌だったと。
泣いてもいい場所を、作ったんだから。

