「で、花火は?」
結局手を離さないまま歩き続ける佑二が、雅を覗き込む。
「…ないです」
「は?じゃあ花見?」
「………うん」
意気消沈。
歩き進めるごとに、まさにそんな感じに分かり易く沈む雅は、佑二とは反対側、右手を握る鷹野を恐る恐る見上げた。
ちらりと、視線が合い、慌てて地面を見つめる。
「…そろそろ2人とも浮上したら?」
ついに佑二にまで言われ、雅は右手を握る手をぎゅ、と握った。
「花、なに見るの?さっき来るとき、サルスベリ咲いてたけど、あれ?」
「え、知ってるの?」
「俺、花好きだもん」
わずかに浮上した雅が、意外そうに左側の佑二を見上げた。
金茶色の髪が顔上半分を覆う佑二も、そんな雅に苦笑する。
「今年は暑かったからねぇ、今頃満開かあって思って見てた」
あれ見るなら、あっちじゃないの?と空いている手で後ろを指す。
「…ベランダから、綺麗なの」
「へぇ、じゃあ早く行かなきゃ。真っ暗になったら見えないじゃないか」
くす、と笑う佑二は、いつもより遥かに饒舌で、鷹野は不自然に黙りこくる。
昌也は後ろを歩きながら、そんな信じがたい光景をただ、眺めていた。

