ゆっくりと、抱いていた肩から手を離した。
雅はそれきり黙り込んだが、鷹野もまた、苛立たしそうに両手の親指をポケットに突っ込むと、黙ったまま、歩き出した。
一歩遅れて、雅も歩き出す。
痛々しいほどの沈黙は、家についても和らぐ事はなかった。
ガラスのドアは、いつも施錠してある。
防弾ガラスのそれは、重い。
鷹野は開けたドアを支えたまま、ちらりと雅を振り返る。
俯いたままの雅は、立ち尽くすように止まったまま、喉元のプラチナを指先で掴んでいた。
「…早くおいでよ」
抑揚のない鷹野の声は、鷹野自身が驚くほどに冷たく響いた。
雅が、小さく首を横に振り、一歩、後ずさる。
一瞬、顔を上げ、くるりと背を向けて走り出した雅の目に、涙はなかったけれど、溢れ出るような悲痛な色は、鷹野の息を、止めた。

