雅は大人しく、歩く速度を落とした。
「…でもあたし、全然駄目だった」
ひとりで会いに行って、何にも答えられなくて。
あっさりキスされて。
何にもわかんなくなった。
凱司さんに、怒られる。
鷹野さんに、嫌われる。
どうしよう、どうしようって思ってるうちに、友典さんの匂いがして。
呟くように話す雅の、肩に少し力が入り、僅かに身を離した。
「ごめんなさい。あたし、キス、好きじゃなかったみたい」
柳井先輩のキス、嫌だった。
鷹野さんのは甘くて。
凱司さんのは煙草で苦いの。
嫌だなんて感じたことなかったし…鷹野さんは…おまじないみたいにいつも…してくれるけど…。
でも。
「…もう、してくれなくて大丈夫だから…」
あたし、やっぱり唇ひとつキレイにしておけない…。
いくら綺麗な色で誤魔化したって、駄目なの…。
俯いた雅に、目眩が、した。

