「お世話になりました」
鷹野が仕事を終えて、宇田川家にまで迎えに来た頃。
雅は友典と由紀に挟まれ、緊張した面持ちでシャープペンシルを走らせていた。
「章介さんから聞いていたけれど、本当に綺麗になりましたね」
黒い髪もよく似合って、と鷹野を見上げ、由紀は、5年前の鷹野の様子や風貌を思い出して、含み笑いをこぼした。
こんなに、穏やかに笑うひとではなかった。
一緒に暮らした訳ではないが、いつでも切羽詰まった目をして、脱色を繰り返して白くも見える金髪を、鬱陶しそうに跳ね上げる仕草が印象に残っている。
「雅さんは大丈夫ですよ」
今、夏休みの宿題をしていますから、少し上がって待って下さいね。
「……英語、ですか」
苦笑すら、綺麗に見える。
凱司は、どんな魔法を使うのだろう。
こんなに、穏やかに笑うなんて。
きっと、本来はこういうひとなのだろう。
取り巻く環境が、人格をも歪めるほどに過酷だっただけだ。
凱司のそばにいれば、雅も大丈夫なのだろうと、目の前の成長した鷹野が、思わせた。

