連絡を受けた友典の母、由紀が保健室に現れたのは、それから少ししてからだった。
「怖かったですね、雅さん」
もう大丈夫ですよ、と微笑む由紀に、初めて雅は息を抜いたように笑顔を浮かべた。
雅の“自宅”は宇田川家で。
母は、由紀となる。
どこまでの話を聞いたのか、由紀はゆっくりと雅の髪を撫でた。
「お忙しいのに……ごめんなさい」
やはり過去の記憶は内に深く刺さっているのか、と由紀が内心悲しくなるほどに、友典の隣で申し訳なさそうに俯く雅の顔には、翳りがあった。
「いいえ、章介さんが留守の時には、私がちゃんといますよ」
雅の髪を撫でながら、柔らかく笑う由紀は、黙って友典を見上げた。
「友典も、怪我はない?」
「……ない」
左手首を隠すように背後に回した息子は、いつの間にか自分に頼らなくなっている。
だが、この事を、ちゃんと連絡したのだろうか。
直接、凱司に知らせるのが躊躇われるならば、父に。
必死な余り、忘れているようならば、叱らねばならない。

