「また、ライブで会えたら」
そう言って席を立った、昌也と佑二の兄弟に。
あ、と声をかける。
「……あの、…すごく…かっこよかったです!」
また、遊んでください、と照れたように微笑む雅の頭を撫でて。
うん、またね、と手を振った昌也と。
唇の端を上げた、佑二。
雅は。
ベースギターのケースを渡してやる凱司に、ふと。
不安をよぎらせた。
「俺らも帰ろうか」
「そだな、鷹野、明日仕事だろ?」
会計伝票を持って立ち上がった凱司に。
雅は急に元気の無くなった目を、向けた。
「………あたし…は…?」
声のトーンが下がった雅に、凱司の大きな手が差し伸べられる。
「抱かねぇぞ」
初めて真っ赤に頬を染めた雅が、差し出された左手の、人差し指だけを。
きゅ、と握った。

