左右に揺れる三つ編みは、長い。

つむじからきっちり編み込まれた髪は、いつもの雅の雰囲気とは違ってきつく見えるかとも思ったけれども。

意外にも柔らかく、毛先に結ばれた黒の小さなリボンが、更にふわりと見せていた。




「待って雅ちゃん」


金色の、細い筒状のものの蓋を外し、雅の顎を指先で上げた。

至近距離で目を伏せ、おとなしくローズレッドの色を唇に乗せられる雅に、友典は、耐えられなかったのか、思わずひったくるように、雅の肩を引き寄せた。



「………化粧くらい、自分でしたらどうですか」


「……友典…返せ」

「…駄目です」


睨み合う鷹野と友典に挟まれ、雅は、ひどく困った顔をしたあと、ゆっくりと鷹野の手からルージュを抜き取った。



「…ごめんなさい、自分でしますから」


友典の手からも抜け出した雅は、誰に視線をやることもなく、バスルームに続くドアに、逃げるように駆け込んだ。




「……すみません」

「…謝る位なら手出しすんな」


ふいっと不貞腐れたように、その場を離れた鷹野は、残されたルージュの蓋をテーブルにカチリと置くと、黙って目を逸らした凱司から、煙草を取り上げた。