たぶん恋、きっと愛



器用に長い指が髪を絡めとり、巻き付く。

指に挟んだ細い櫛が、何度も髪筋をなぞった。



「複雑な事、してますか?」

「いや全然?もうすぐ終わる」



ただおとなしく膝に挟まれ、気持ち良さそうに髪を触らせる雅は、友典の知らない顔をしている。

静かにコーヒーカップを置いた宇田川が、ふと興味深げな面持ちで立ち上がった。



「へぇ…上手いものですね」

「そう?ありがとう」


少し見せてください、と雅の編まれた髪を、まじまじと見つめた宇田川は、つと指を伸ばし、ぴたりと止めて鷹野を覗き込む。



「…触っても?」

「上から下に撫でるだけにしてね」


宇田川の指先が、雅の髪を滑る。


友典の視線は、何か信じがたいものを見るかのように、父親の指の先を凝視した。



「…なんで」


許可を。
鷹野一樹に求めるんだ。



片膝を付いて、感心したように編み目をなぞる宇田川は、ふと苦笑して指を離した。



「これでは私も、雅さんと変わりませんね、失礼しました」

とてもお似合いですよ、と雅に笑いかける距離も、友典には近すぎる気がして、苛々と。


ブラックのままのコーヒーを、流し込んだ。