翌朝、雅が登校する頃、宇田川が現れた。
友典を連れて。
「おはようございます雅さん、凱司さんの支度はお済みですか?」
昨日の怯えようを気にした宇田川は、ことさらに甘い顔を見せる。
「おはようございます。中で待つように言えって言われましたから…」
どうぞ、と促す雅に昨日の怯えた様子は無く、宇田川はほっとしたように、では失礼します、と靴を脱ぎ揃えた。
「今、コーヒー淹れますね。友典さんは…ブラックですか?」
「…なんでも」
「なんでも…ですか」
わずかに首を傾けた雅が、手早くカップを揃え、慣れた手付きで湯気の上がるコーヒーを注いだ。
ひとつは、そのままブラックで。
ひとつは、スティックシュガーとミルクをソーサーに添えて。
「ファーストフード店で付いてきたやつで、ごめんなさい。凱司さんも鷹野さんもブラックだから、ちゃんとしたの買ってなくて」
「……いえ」
宇田川は、何故か緊張した様子の息子を眺め、思い当たる事がなかったのか、微かに眉を寄せた。

