たぶん恋、きっと愛



多分、世の中広しと言えど、凱司にこんな事が出来るのは、自分だけ。

宇田川辺りに見られたら、大変な騒ぎになりそうだ。



ギリ、と凱司が歯を軋ませる。



「…てめぇ、なんのつもりだ」


凱司はそれでも手を上げなかった。

掴まれた髪に痛そうな素振りも見せないが、威嚇するほどの目にも、ならなかった。


鷹野は、そんな凱司に息のかかるほどに顔を寄せると、少しも逸らさず睨む目を、真っ直ぐに射抜いた。




「…ヤる時は、わざわざお前が居ない日にコソコソしたり、しねぇんだよ」

何を柄にもなく揺れてんだ。
いつもの目は、どこに落としてきた?



鷹野は、凱司の髪を離すと、打って変わって、妖艶な笑みを浮かべ、唇を寄せた。


「まあ…俺、そんな凱司も嫌いじゃないけど」




「…っ寄んなっ!!」


今にも唇を掠めそうな、距離。

我に返った凱司に思い切り腿を蹴り飛ばされた鷹野は。


びっくりして駆け寄る雅に助け起こされるまで、腿を押さえて転げ回り、派手に笑いながら、痛がった。