「…あ…れ………?」
抱き起こされた形のまま。
雅の肩に手を回している鷹野を見上げた。
思いの外、その目との距離が近かったせいか、雅は傍目にも解るほど体を震わせた。
「ご…ごめんなさいっ…」
「目、醒めた?」
押し返そうとする雅を無視して腕に閉じ込めたまま、鷹野は。
大丈夫だよ、と笑顔を見せた。
「………ぁ…」
ふ、っと力の抜けた雅が、凱司を見つめ、鷹野を見つめた。
「……はい」
ふっくらと。
安心したように微笑んだ雅の目は。
酔いが残っているのか、ひどく甘やかで。
何かを吹っ切るかのように、大きく息を吸い込んだ。
膝を枕にしていた昌也には、平謝り。
ビールを注ぎ、甲斐甲斐しく料理を取り分ける。
「凱司さん、あたし、ホッケ食べたいです。頼んでもいいですか?」
多少、無理をして笑っている気がしないことも、ない。
けれども。
凱司は、そんな雅の様子を、探るように見ながらも、頷いた。
「雅ちゃん、ホッケ終わったら柚子シャーベット食べる?」
「うん、食べたいです」
じゃあ、それ二個、と店員に注文する鷹野に、雅は笑う。
「鷹野さん柚子すきですか?」
にっこりと見上げてくる雅に、負けないくらい微笑んで。
鷹野は。
スイーツ好きの男は駄目ですか?と、おどけてみせた。

