雅は、楽しそうに食事を作る。
鷹野も作れるし、凱司も作れるけれど、代わりに作ることはあまりない。
雅が、不安そうにするから。
「凱司、雅ちゃんのプラチナ」
「……が、どうした」
「このタイミングって卑怯じゃねぇ?」
明日の夜、もしくは明後日の夜も二人きりになるはずの、前夜になど。
「見つけたから返しただけだ」
凱司の、予想外に不愉快そうな目に、正直驚いた。
金髪を整髪料でまとめ、いつもよりもキツい印象の凱司は、指に挟んだ煙草をくわえると。
何か文句でもあんのか、と睨み上げた。
「……ふぅん、くれるんだ?」
「…んな事言ってねぇだろ」
今の凱司は、どことなく、沈んでいて。
いつでも自信あり気で真っ直ぐな目は、わずかに卑屈な色すら浮かんでいる。
「…ははっ、なんて目ぇしてんだ、凱司らしくもない」
わざと笑い飛ばしてみても、浮かび上がる様子は、ない。
……まさか、本気なのか?と。
まじまじと見つめ直した鷹野は。
小さくため息を吐くと、やっぱり楽しそうにキッチンに立つ雅を、見やった。

