帰宅した鷹野は。
いつものように額にキスを落とすと、変わった事がなかったか、雅の様子を探る。
思わず、先日のような艶っぽさがないか見てしまう自分に苦笑するが、今日は大丈夫なようだ。
「雅ちゃん、線香花火あった?」
「ううん、セットでいっぱい入ってるのはあったんですけど…線香花火だけって、なかった」
「そっか…じゃあ明日捜してみて、なかったらセットのやつ買おうか」
決まった時間に帰るのは、苦痛じゃない。
今までは。
立て続けに接客して、もう笑顔を浮かべたくないような日は、帰宅してから凱司に八つ当たりする事も多々あった。
「んー、勿体無いから、なかったら…お花見したいです」
「花見?」
何か、咲いてたっけ?
今は。
雅が何を言い出すか、わからない。
わからないから、毎日、楽しみにしている。
どれだけ疲れたとしても、不愉快な事があったにしても。
八つ当たりなんかしている暇は、ない。
雅の首筋に戻ってきたプラチナには、すぐに気が付いたけれど。
何も言わずにどこか面白そうに。
じゃあそうしようか、と笑った。

