「…別に轢き殺さねぇし」
そんな怯えないでよ、と、ため息をついた鷹野は苦笑する。
「だけど随分と早く寝ちゃったなぁ…」
雅の隣に座って、顔を覗き込みながら、くすくす笑う鷹野に。
ようやく凍った空気が溶けた気がして、昌也は息をついた。
「昨日、あんまり寝てないって…。…その……寝かせてくれなかった……とかで」
「…あー……そう」
困ったような、苦いような目を雅に向けて。
鷹野は小さくため息をついた。
「………や…っ…」
急に身じろいだ雅に、視線が集中した。
「…ぃ…や…」
「……不穏で淫靡に聞こえるのは…俺が変態だから…?」
ポツリと呟いた佑二の頭を間髪いれずにひっぱたき、凱司は鷹野の足を蹴る。
「起こせ!」
「雅ちゃん雅ちゃん!」
昌也の膝の間に突っ伏している雅の体を揺する。
「…やっ…だめっ…」
鷹野の手が、雅の体を引き剥がすように思い切り、抱え起こした。
ぐにゃん、とした体が起こされて。
頭の支えがなくなると、雅はようやく。
目を開けた。

