「…言っても、怒んないでね?すぐ、忘れてくださいね?」
急に声を緊張させた雅に、再び視線を合わせれば。
「…あたし、二人の傍に…いたいだけなんです…」
恋してるとかじゃ、ないはずだけど、と付け加えて。
雅は意を決したように唇を結び、そのままあっさり意気消沈したのか、俯いた。
「……ご…ごめんなさい、恋じゃないはずだけど…はずだけど……好き…なの」
二人が。
凱司さんと、鷹野さんが。
二人が居れば、あとは要らない。
「ごめんなさい…ほんと忘れてね? 気にしないでね?」
あたし、凱司さんか、鷹野さんが結婚するときには、ちゃんと出ていくから。
だから。
それまでは。
「傍に、…おいて…欲しいです」
小さく小さく、消え入りそうな声で、そう言った雅を。
凱司は複雑そうに眇めた目で、ただ見つめていた。

