「…そんなだから、目付けがついたんだよ、きっと」
「……ぐ…偶然でしたもん」
友典さんが同じ学校だなんて、凱司さん知らなかったもん。
宇田川さん…章介さんだって…知らなかったし…。
「章介さん?」
「…友典さんのお父さん」
「…おとーさん…を、普通、名前で呼ぶ?」
菓子類の並ぶ棚の前で、佑二はいくつかを手に取り、呆れたように言う。
雅は、だって宇田川さんの奥さん、そう名前で呼んでて。ちょっと羨ましかったんです、と、唇を尖らせた。
「…あんただって凱司さんを名前で呼ぶじゃないか」
「………………え?」
「……えぇ?」
奇妙な間を置き絶句し、不意に耳まで赤くした雅を、まじまじと見つめ、佑二は深くため息をついた。
「…俺も名字で呼ばれたことないけど?」
「……」
「あーはいはい。もういい。好きに呼べばいいんじゃね?」
唇に指を当てて考え込んでしまった雅の手を再び掴み、レジに向かった佑二は、可愛いんだけどねぇ、と口癖になったかのように、独りごちた。

