「で、彼は何をあんなに、騒いでた?」
近すぎ、と友典から雅を引き剥がした鷹野は、田鹿を振り返った。
「えっ…」
「……雅さんは彼を振りましたか?」
返せとばかりに鷹野の手から雅を引き寄せ、友典が質問を重ねる。
「………夏休みに振った時に俺と凱司に会ってんだよ」
雅の体は、くるりと反転し、再び鷹野に抱き止められる。
「ああ。……なのに傍に俺がいるから」
やや乱暴に、奪い返す。
「お前になら勝ち目があると」
友典の腕を払いのけ、引き寄せようとすれば。
「……失礼な奴ですね」
ますます、抱え込むように雅を閉じ込める。
「………返せ」
「……駄目です」
鷹野の後ろで田鹿がおろおろし、友典の腕の中で雅がおろおろと。
ひとりで戻ってきた佑二が、一瞬足を止め、無言で雅の腕を掴んで連れ去るまで、引きつった笑顔で火花を散らす二人は、目で助けを求める雅と、それに必死で首を振る田鹿を無視して。
睨み合っていた。

