パチャ、と床に爽健美茶が零れる。
濡らされた雅のハンドタオルは、友典の頬を冷やした。
「口ん中、見せてみ?」
再び両手で正面を向かされて、顎を上げられた。
まるでキスをするかのように顔を寄せる鷹野に、口など開けられない。
友典はハンドタオルを自分で押さえると、ふて腐れたように後ろを向いた。
が。
その後ろ、には、心配そうに見上げる雅がいて。
雅はハンドタオルの上から、そっと友典の頬に、手を添えた。
どっちを向いても居たたまれない。
「………いや、大丈夫だから」
雅の手をも振り切り、大袈裟な、と呟けば、鷹野はようやく笑ったようだった。
「ごめんな、間に合わなくて」
ぽん、と頭に手を置かれ、友典は黙り込んだ。
これは、俺の役目だ。
彼女に困った事が起きた時には、俺が守る。
鷹野一樹の代わりに守ろうとした訳じゃない。
なのに。
じわじわと押し寄せる敗北感に、友典は打ちひしがれた。

