せっかく愉しそうにしていたのに。
せっかく、笑っていたのに。
友典は、佑二が言った意味を、理解した気がした。
あんな顔をさせるなんて。
雅の腕を掴む手を、無言で引き剥がした。
雅を、背後に庇うように立ちはだかる。
背後の雅を壁に押し付けないように真っ直ぐに立ち、相手を睨み付けた。
「……宇田川…いたのか」
「…………」
僅かに、しまった、といった顔をした男は、一歩引いた。
紗の掛かったような聞こえ方だが、相手が怯んだ事は解る。
「…何、してんですか」
目の前の細身の男は、名前は解らないが、学年は上だろう。
低く呟くように睨む友典に、気まずそうに舌打ちをした。
「…別に、何もしてねーよ」
ただ、と男は続ける。
「なんで、相手が変わってるんだ、って訊いただけだ!」
「………」
納得いくか!!
須藤の相手は金髪の刺青と、今そこでギター弾いてた奴だったはずだ!
だから身を引いたのに、なんでお前なんだ!
そう叫ぶ男は、周りがざわめいた事にも気が付かないのか、大振りに拳を振り上げた。

