たぶん恋、きっと愛




「佑二さんは?」

「さっき、中に」

「あ、じゃああたしも行きたいです。佑二さんのベース、カッコいいから」


中行きますね、と友典に首を傾げた雅は、ドアの脇に寄り掛かるようにして弦を弾いている鷹野と僅かに視線を交わし、微かに微笑み合った。


なにぶん、同じ学校の人間が多い。
あまり親しくしても、後が大変だから、と友典に言われた通り、雅は控えめに会釈すると、ひとつドアを入り、黒く煤けたような階段を、降りていった。


音は、既に漏れ聞こえている。


「来たこと、ありますか?」

「…いえ、初めてです」

「すごい音するから、耳、気をつけてくださいね」

「………」



階段を降りきった右側の、やっぱり煤けたような黒いドア。

雅が手をかけ、開けた瞬間に、腹を殴られたような振動が、友典を襲った。



「……っ」


雅が何かを言っているが、全く聞こえない。

床から、天井から、左右から。

衝撃波のような音に、押し潰され、友典は胸を押さえた。


ふいに、腕を強く引かれ、体が傾く。



「だ、い、じょ、う、ぶ?」


耳に唇が触れそうな距離で叫ばれても、はっきりとは、聞き取れなかった。