「他に誰も弾けないの?」
ふいに口を挟んだ佑二に、視線が集まる。
「ひとりで誤魔化す事は?」
烏龍茶を飲みながら、目を見せない佑二は、多分、田鹿を見ているんだと思う。
「なにやる予定?」
「え、あ…」
田鹿は我に返り、慌ててカサカサとポケットから紙を出し、立ち上がった佑二に渡す。
「…ずいぶん古いのやるんだね」
「あ…親父の影響で…あのっ、弾けませんか!?」
「俺は弾けないよ。ベーシストだもん」
「…そ、ですか…」
あからさまに肩を落とした田鹿に、佑二はまだ紙を見つめている。
金茶色の髪が風で流れ、僅かに目が見えた。
「もう…始まるから…無理ですよね…順番かえて貰ったけど、やっぱりキャンセルします…」
「…心当たりあるけど…誰でもいいの?」
でも仕事かも知れない。訊いてみようか?
とたんに目を輝かせた田鹿を見上げ、嬉しそうに笑んだ雅は。
静かに友典の傍に戻ると、来てくれると良いですね、と笑った。

