「…あの、ね」
友典の目を見ないまま、雅は続ける。
ぽつぽつと、行き先が同じと思われる格好の人間が、同じ歩道を歩き始めた。
「鷹野さんは……あたしがキスに喜ぶ事、知ってるから…」
「…………は?」
「…キス…好きじゃなかったんだけど、好きになったの、多分。…だからいつも、挨拶みたいに……してくれるんだと、思う…」
いまいち、意味がわからない。
雅がキス好きだから、する?
「でも、唇にしてくれるのは、申し訳ない気がする…し…」
付き合ってるみたいに誤解されたら申し訳ないので……、断るように…します…。
そう呟いた雅を、思わずまじまじと、凝視した。
「……馬鹿…か?」
「…………ついに口に出しましたね」
思わず声に出た友典に、雅は苦笑した。
友典は慌てて片手で口を押さえたが、雅は愉しそうに笑い、だから大丈夫ですよ、と言う。
「鷹野さんは…優しいから、してくれるだけだし、凱司さんは持ち主だもん、あたしをどうしようと、自由」
だから、“大丈夫”なんです。

