たぶん恋、きっと愛




「あれ?なんでそっちから?」


階段を登りきった所で、辺りをきょろきょろした雅は、何故か後ろから同じ階段を登ってきた友典に、いつもと変わらない笑顔を向けた。


「あ、少し遅れたから…降りてくれたんですか?」

すみません、と小首を傾けた雅に、笑顔を向けることは出来なかった。



「………いえ」

「…もしかして、すごく待たせましたか?」


微妙な空気を気にしたのか、雅は申し訳なさそうに手を伸ばしかけ、じっと探るように友典の顔を見つめると、何処にも触れずに引っ込めた。



「……あ…いや…すみません、大丈夫ですから」


引っ込められた指に、雅との距離を感じた。

友典の口数は、いつもと変わらない。

なのに、今。
明らかに雅は、距離を置いた。




「……前髪、切ったんですね」

「…今朝、鷹野さんが…切ってくれました」

「………」



可愛いとも、似合うとも思うがどうしたらいいのか、わからない。

口には出せない。


雅は別に感想は求めていないのか、自分の前髪を少し引っ張り、駅の時計を見ると、行きましょう、と友典に視線を合わす事なく、歩き出した。