茫然と、見ているしか出来なかった。
飛び出して行って胸ぐらを掴むには、あまりにも確証がなくて。
本当に雅は、凱司の女なのか?
父は、違うと言っていた。
痕を見て、違わない、と判断したのは自分だ。
もしかしたら、凱司の庇護下のふたりが、付き合っているのかも知れない。
ふたり共が、“凱司のもの”。
友典には、今見たものを忘れることも、雅に問い質す事も、でき兼ねた。
車に寄りかかり、雅に手を上げて見送る男は、遠目にも綺麗で、艶やかで。
あの痕をつけたのは、こっち?
雅は頭を下げると、真っ直ぐにこちらに歩いて来る。
思わず柱の影に隠れてしまってから。
動揺を沈めようと、大きく深呼吸を、した。

