「雅ちゃんて、ほんと髭フェチだよね」
マスターが、栗をくれた。
薄紙にくるまれた、マロングラッセ。
そんなこと、今までなかったのに、矢車草の青い花びらが入った紅茶のティーバッグ2つと共に。
セロファンでくるまれ、青い小さなリボンで結ばれたそれを、帰りがけに雅が受け取って。
また、いらしてくださいね、と笑うマスターに、雅はひどく照れたように微笑み、ありがとうございます、と頭を下げた。
何となく、解る。
雅が、マスターの口髭に興味を持ったのが。
「えっ…そんなこと…な…」
「一瞬指が伸びかけたろ」
くすくすと笑う鷹野は、時計を見やった。
友典との待ち合わせは、5時半だ。
甘いデートも、もう終わり。
「でも我慢しました!」
「さすがに俺でも止めたと思うよ」
くすくすと。
フランネルフラワーの手触りのように、心地よい笑い声を立てた雅が、…そうですよねぇ、と繋いだ鷹野の左手を、きゅ、と握り返した。

