「まだ5時半まで時間あるね。どこか行きたい?」
陽はまだ、傾き始めたばかり。
9月といえど、空気はまだ熱気がこもり、多少は高くなった空も、まだ夏のくすみを残している。
「あ、鷹野さんの働いてるとこ行ってみたい、かも」
「えっ」
「だめですか?」
「だ…めじゃないけど…ちょっと……なあ……」
営業中、だ。
中まで見せるわけにはいかない。
……色んな意味で。
多分、普通の美容院よりは若干ピンクっぽい、と自覚がある。
単に、髪をいじる目的ばかりではない女性客に、含みのある笑顔を向け、ちょっとしたスキンシップをはかる。
時に男性客もあるが、多分心は乙女なのだろう。
もしくは……いや、うん。
確かに場所も知らない、というのも、何かあった時に困るかも知れない。
「…場所確認、だけなら」
ほんのちょっとの事なのだが、いかがわしい、と言われれば否定は出来ない。
「見るだけ、ね? 中は入らないよ?」
「…は、はい」
妙に念を押した鷹野に押され、雅は曖昧な笑みを浮かべて、小首を傾げた。

