「うん、そのうち出てくるよきっと」
凱司のポケット辺りから。
とは言わずに、穏やかに笑んだ鷹野は、噛み痕が見えないように貸した生成りのストールを、指先で直した。
怒るでもなく、ただ沈んでいた雅。
ネックレスも、凱司が返してくれない、とは言わない雅。
他の事ならば、怒ったり笑ったりするのに、こと男女の事になると、途端に萎縮する。
そして、なかった事にしたいのか、少し経つとゆるゆると笑顔を見せ始め、何も気にかからない様子を見せる。
忘れてなんか、いないくせに。
「雅ちゃん、これ付けてみて」
ティファニーのオープンハートを思わせる、小さなネックレスを渡す。
素直に、首の後ろで留めたそれは、案の定、よく見えなくなった。
「ちょっと外していい?」
ストールに手をかけ、結び目を解くと、襟のないカットソーからくっきりと覗く、痕。
その傍を通るチェーンの安っぽさと、痕の痛々しさに、鷹野は首を振った。

