「鏡、見たいです」
「まだ駄目」
背後に立ち、結い上げた髪にクリームを馴染ませた鷹野は、大きく、細く赤いリボンごと捻りあげた。
くるくると結い目に巻き付け、毛先を小さなピンで留める。
「うん、可愛い」
すっきりと、高い位置でまとまった髪と、短い前髪。
鷹野は正面から、じっくりと眺め、満足気に笑った。
「リップカラー、していい?」
「…かわ……」
「可愛いから」
返事に重ねるように即答した鷹野は、とうにパレットを開いている。
「強引な……」
「凱司にだけは言われたくないね」
苦笑混じりに呟いた凱司も。
雅の顎に指を掛けて、親指で唇を開けさせた鷹野の指を、奇妙な思いで見つめていた。
塗る、ではないような小刻みな筆の動きに、雅の唇は、パレットの中の色合いよりもずっと柔らかく色付いていく。
「絵描くのと、一緒」
今にもキスをしそうな距離に、凱司が目を逸らした頃、時計がカチリ、と10時を示した。

