「まだ…やってなかった……んですか」
「忘れてました」
帰りの電車の中で、友典は呆れたように見下ろした。
実習で作ったという、ピンクのカーネーションと濃い緑色の葉を組み合わせたコサージュが、雅のバッグにピンで留められている。
「…今夜、終わらせないと」
「………ですよね」
明日は、鷹野さんがお休みだって言うから、一緒に輸入雑貨のお店に行く約束したんです、と雅は嬉しそうに笑う。
「夕方、田鹿くん達のライブ…ほんとに行って大丈夫?ツラくないですか?」
無言で頷いた友典を、雅は申し訳なさげに見つめるが、すぐに微笑んだ。
「じゃあ、少し付き合ってくださいね」
日曜日は、友典さんちに、凱司さんと行きます。
月曜日は…、と言い淀んだ雅が、少し眉を下げて。
凱司さん、パンダと酔っ払った蟹に会いに行くんだって、と曖昧に、笑った。

