たぶん恋、きっと愛



慌てていたから、整髪料をつけ忘れた。

髪が濡れているうちはまだ良かったが、乾いた途端に癖が出る。


昼休みに雅を見に来た時には。

何度も濡らし直し、何度も乾いた後で、静電気やら癖やらで、あちこちが跳ねた酷い有り様だった。



「…ちょっと、待ってくださいね」


雅には、穏やかに接する事を勧められた。

いつものように、睨むような目付きはしない事。



「髪……鷹野さんがくれたのがあるから…」


小さな、透明な容器に入った液体を、いつもそうされているのか、友典の目を手で覆い、霧吹いた。


指先で、髪を掻き回す。



「……自分で…やりますから」


「そう、ですか? あとは整えてくださいね」


サラサラになるんですよ、と、笑う。

「サラサラ…ですか」

「サラサラです」

「…………」


いつも立てている髪なのに、サラサラにしたのか…と友典は軽く凹む。


指通りが滑らかになった髪を気にしつつ、友典は今朝のチケットを取り出した。



「明日、……行きましょう」

「あ、加奈子に朝聞きました」


でも、せっかく学校休みなのに申し訳ないです、と見上げた雅が、ふと、友典を見つめ、髪に指を伸ばした。