たぶん恋、きっと愛



成すがままに引きずられて消えた友典を目で追った雅が、恐々と凱司を見上げた。



「……か、彼氏です」

「思い直せ。あれはゾンビだ」



シャワーの音がして、たっぷり3秒は経った頃、友典の悲鳴とも怒声とも取れるような声が、聞こえた。



「……濡れゾンビ…」

「…笑かすな」


くく、と控え目に笑った凱司が、雅の襟元を引っ張った。


勢いに任せて噛んだ痕は、朝になって更にくっきりと、目立っていた。



「見えちゃいますか?」

「ギリギリだな。今日は右向くな」

「はい」



痛い、だろうと思う。

出がけに襟を開けて見た時は、歯形だとは解らないかも知れないけれど、皮膚のすぐ下で出血した、鮮やかな赤い小さな斑点が浮いていた。



「大丈夫」


にこっと笑顔を向けた雅が、リボンの形を直し、友典さん走ってる音がしますね、と凱司のシャツを、つまんだ。