「おはようございます」


凱司に連れられて、雅は宇田川家の前まで来ていた。

昨日の約束通り、友典と一緒に登校する為に。


ドアを開けたのは、宇田川の妻、友典の母。

そして雅の、里親。


きっちりと頭を下げた凱司に倣い、雅も頭を下げたが、初めて見る“きちんとしている凱司”を見ていたい気もする。


日曜日に改めて伺わせて頂きますが、と、聞いた事もない言葉遣いをする凱司を、まじまじと見上げれば、これが件の須藤雅です、と、片手で正面を向かされた。



「あら、噂通り、愛らしいお嬢さんですね。凱司さん」

穏やかに笑むその人は、宇田川の家内です、由紀と言います。と雅の髪を撫でた。


「申し訳ありません、わたしが留守がちなもので、ご足労かけてしまって」


もう出かけるのだろう、きちんとスーツを着た由紀は、ドアから家の中を振り返った。



「章介さん? 友典? お待たせし過ぎです」


「しょ…」


慌てて両手で口を押さえ、“章介さん”!? と目を輝かせた雅を、凱司の引きつった目が、見つめた。