誰とも口を利かないまま、授業を2つ、やり過ごした。
三時限、四時限と、専攻授業の実習がある。
「……雅」
話し掛けて来たのは、加奈子。
雅は目を上げ、すぐに逸らした。
「やっぱりさ、私が気持ち悪いから、一緒にいよ」
金髪の彼らの事知ってるの、私と田鹿だけだもん。
と、にこりと笑った加奈子は、朝から笑わないままの雅の手を取った。
「だから、もう少し聞かせてよ。結局、どうなってるのか」
田鹿は専攻別だしさ、私達はまたカーネーションにワイヤー巻き付けるだけだもん、ゆっくり話したい。
忘れて、なんて言われたって、出来るわけないよ。
「……ん」
「ちょっとー、元気ないよ!?」
「………うん」
あ、と顔を上げた雅は、ポケットに入れたままのライブチケットを加奈子に渡した。
「あたし、行かないね」
雅は、あからさまに目を逸らし、加奈子の隣を足早にすり抜けた。

