とにもかくにも、友典が暴力的な手段に出た事はわかった。
「……挫けそう」
昨日の昨日だ。
昨日の今日ではない。
「噂くらいほっとけば良かったな…」
下手に、消したい素振りを見せたから、こんな事になっている。
うっかり愚痴も言えないのかも知れない。
凱司さんは、大丈夫だと言うけれど。
「やっぱりちっとも大丈夫だとは思えない…」
“妊娠した”ままで良かった、とまで思ってしまった。
誰の子でもいい。
お腹が大きくなるわけでもないのだから、すぐに誤解もとけたろうに。
「…友典さんの馬鹿っ」
泣き出しそうな顔で、ひとりで呟いた雅は。
鳴りだしたチャイムに、渋々トイレの個室ドアを開け、真っ直ぐ顔を上げて廊下に、出た。

