噂は、消えていた。
消えているかのように、流れを止めていた。
すれ違う人が、目を逸らしていくように見えてならない。
何がどうなっちゃってるんだろう、と。
雅は頬を引きつらせた。
「では、昼休みに」
雅にバッグを返し、踵を返した友典を、昨日よりも呆然と見送った雅は、昨日よりも恐々と背後から声を掛けられた。
「す~ど~う~…」
「…田鹿くん…あたし、どうなってる、の?」
噂が、こんなに早く消えるわけがない。
消えたのではなく、更に上塗りされている気がする。
本人の耳に入らぬよう。
本人を冷やかしの対象にしないよう。
「あたし……挫けそう」
昨夜遅くに、夕方寝た為に眠れない雅が、いつものやり方で白い錠剤を押し込まれ、いつの間にか眠っていた。
おかげで疲れはすっかり抜けていた筈なのに、雅の肩はがくりと、落ち込んでいた。

