「ない…気がする」
「ああ? ……お前は鷹野と甘いもん食って笑え。俺は付き合えねぇから。皿下げただけで文句言うな」
面倒臭そうにぐしゃぐしゃと髪を撫で乱すと、雅はあからさまに唇を尖らせた。
「やっぱり無いんだ…」
いいもん。
何か出来るようになるもん。
と、可愛らしく拗ねる雅に、鷹野は、正真正銘、雅ちゃんにしか出来ないのになあ、と苦笑をもらした。
「ああそうだ。明日の朝、友典が迎えに来るとか言ってるから、学校で待てって言っといたからな」
煙草を指に、さらりと言った凱司に、雅は一瞬動きを止め、眉を寄せた。
「なんで友典迎えに来んの?」
「個人的に雅に付いた」
「…なんで急に」
「雅に保身能力とプライドが足りない気がしたんだと」
「………的確だけど」
難しい顔のまま黙っている雅を眺めれば、まだ相当に困惑している事がわかり、鷹野もまた、僅かな不安に眉をひそめた。

