たぶん恋、きっと愛



「そうだ、息吹どうなった?」


スープもサラダも作らなかったけど…なんかやっぱり寂しいねぇ、などと笑っていた鷹野が、ふいに訊いた。



「さぁなあ…今日は大人しくしてたぞ。まだ手ぇ動かないけどな。店自体は坂崎が回せるから問題ないだろ」

「ああ、坂崎さんって…確か片手で人を握り殺せそうな人だよな?」


「あれで…なかなかの乙女なんだぞ」

「…なに、彼、そっち系なんだ?あんな厳ついのに」



知らない人間の話題に、耳を傾けながらも雅は。

以前コンビニから近くのマンションに道案内をした、“息吹”の風貌を思い出していた。


色の濃いサングラスをかけていたせいか、それしか印象は無い。

よくよく思い出せば、さほど乱暴なイメージは抱かなかったように思える。

この先、会うことは無いのだと思うけれど。


それでも、気にかかると同時に、怖かった。

きっと、金銭を出して自分を抱いた男とは違う。


きっと、きっと、最初の時のような。


寒くて、痛くて、ただ怖かった、あの時の赤い髪…のような、人なんだろうと、思った。