「…下手な誘惑すんなっての」
すでに僅かに寝息の混じる雅を、苦々しい目で見やり、凱司はそれでも再び、髪に指を差し込んだ。
「宇田川に…連絡しとくか…」
あくまで普通の高校生に、付き従う意味も、薄い。
従われる方とて、どう使えばいいのかすら解らないだろう。
単純に、便利な男、ではないのだ。
例えば息吹。
あれが万一、雅に近づけば、友典は刺されても雅を守らねばならないし、守るだろう。
例えば、彼氏。
そんなものが雅に出来た時、友典はどれだけ雅を大切にしていようと、見ていなければならない。
あいつに、出来るだろうか。
雅を守りつつ、束縛しないでいられるだろうか。
庇護と束縛。
紙一重だ。
「まだ無理だよな…」
今日だって、過剰だ。
寝ていないにしろ、こんなに掻き乱して疲れさせて。
雅に、人を使う器量も無い。
気を使い、どんどん追い詰められて、笑えなくなる。
笑えないまま何かを考えているときの雅は、ひどく甘やかで。
「…俺が疲れる」
凱司は、本格的に寝息をたてはじめた雅にシーツをかけると、音楽の音量を、下げた。

