「凱司さんが…書いてくれました」
小さく小さく囁かれた声を確認した友典は、雅の顔がすぐ傍にあることに動揺し、慌てて真っ直ぐ体を伸ばした。
今度は、英語教師が聞いていないのか、友典と雅とを胡散臭げに見比べながら、しきりに首を傾げる。
「で、何か問題あるのかよ?」
ちゃんとやってあるんだからいいんだろ、と口調と声量を変えた友典は、教師の手から雅の英作文を取り上げ、一瞥し、思わず眉間にしわを寄せた。
「どこか、おかしいですか?」
不安気に友典を見上げる雅を、思わず呆れた目で見下ろし、作文をわざと乱暴に教師の手に押し戻した。
「問題あるようには見えねぇ」
雅の背を押し、踵を返そうとした友典の手首を、英語教師がすかさず掴む。
「…待て待て、須藤雅。今度は手伝い無しで書いてこい」
「ええっ」
「宇田川、手伝うなよ」
「……………」
しょんぼりと肩を落とした雅が新しい紙を受けとるのを眺め、友典は、掴まれた手首を振り払いながらも、…そうだよなあ、そうなるよなあ、とあっさり、諦めた。

