たぶん恋、きっと愛




「……鷹野…さん、携帯…」


途切れ途切れ、囁かれた声と共に、遠慮がちに肩を押し戻された。



「…終わり?」

「ん…。だって、電話鳴ってるのに…」


テーブルに置かれた鷹野の携帯が、小さな着信音を鳴らしている。

鷹野はゆっくり唇を離すと、やっぱり名残惜しいとばかりに、やや深く、吸い上げた。



「…んっ…電話…出てくだ…」


着信音は、ただの電子音。

押し戻そうとする雅の手が、徐々に震えてくるのを感じた鷹野は、ようやく、床から手を離した。

蓋が開いたままの、銀色の梨地の缶から、開封したばかりのベルガモットの香りが漂う。



「…あ、切れた」


途切れた音に、つい目を合わせ、鷹野は、自分の姿を見下ろして、困ったような笑顔を浮かべた。



「…無いよね。こんなとこで、俺こんな格好で、こんな状況でキスするとか…」


「…そっ…そうですよ…電話切れちゃったじゃないですか」


目を逸らした雅が、口許に指を当て、いくぶん安心したように、小さく息をついた。