雅は、座り込んでいた。
鷹野が、そこ、と言った場所に、そのまま、静かに。
キッチンの隅に、寄り掛かって。
「…………………」
「…………………」
シャワーを終えた鷹野と、膝を抱えていた雅とが、互いに少し落ち着いたのか、気まずそうに微笑む。
「……着替え、持ってなかったですね、そういえば」
「うん。…ごめんね、こんな格好で」
腰から下に巻かれたバスタオル。
頭からかぶった白いタオルもそのままに、膝をついた鷹野は、雅の両脇の床に手も、ついた。
額を、寄せる。
「まだ、匂う?」
「……ううん」
濡れた髪から、雅の胸に雫が落ちた。
額をくっつけると、白いタオルが、左右の視界を遮った。
「……キス、していい?」
「…足りなかったんですか?」
駄目だとは、言われなかった。
僅かに揺れる雅の目は、甘いものには遠かったが、少なくとも。
嫌悪感は、浮かんでいなかった。

